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一般的基本権と参政権・受益権

Section4 一般的基本権と参政権・受益権

<ポイント>

1 幸福追求権

・憲法13条の幸福追求権には、新しい人権を根拠付ける機能がある。
・前科や犯罪経歴をみだりに公表することは許されない。
・警察官が、正当な理由もなく、個人の容貌を撮影することは許されない。
・氏名・住所などを、本人の意思に基づかずに、みだりに開示することは許されない。

2 法の下の平等

・法の下の平等という原則は、法の内容自体が平等であることを求めている。
・法の下の平等とは、合理的な差異を許容する相対的平等である。
・華族その他の貴族の制度は、禁止されている。

3 参政権

・憲法は選挙権を保障しており、やむを得ない事由がない限り、選挙権の行使を制限できない。
・選挙資格の平等だけでなく、投票価値の平等も、憲法上の要請である。
・議員定数の格差による投票価値の不平等が合理的でない場合、選挙権の平等の要請に反し、合理的期間内に是正されない場合には違憲となる。

4 受益権

・公務員の不法行為による損害について、国家賠償請求権が認められている。
・抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けた場合、補償を請求できる。
・請願を受けた機関は、その内容を心理判定する義務を負うわけではない。

 

1-4-1幸福追求権

1幸福追求権とは何か

 憲法13条後段は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」をうたっています。この幸福追求権は、個人の尊重の原理に基づく一般的・包括的な権利です。そのため、時代の変化とともに生まれてきた新しい人権を根拠付ける機能があるとされています。

2プライバシーの権利
(1)プライバシーの権利とは何か

 判例は、憲法13条を根拠に、プライバシーの権利を導き出しています。プライバシーの権利というのは、私生活をみだりに公開されない権利であるというのが、判例や伝統的な学説です。しかし、プライバシーの権利は、自己についての情報をコントロールする権利であるとする説が有力になっています。

(2)前科・犯罪経歴

 前科や犯罪経歴は、人の名誉・信用に直接関わる事項であり、これらをみだりに公開されない利益は、法律上の保護に値するというのが、判例です。そして、判例は、市区町村長が、漫然と弁護士会の照会に応じて、前科等の全てを報告することは、公権力の違法な行使に当たるといっています。
 しかし、前科等の公表が全く許されないわけではありません。判例は、その事実を公表することに歴史的または社会的意義が認められる場合、その者の社会活動が社会に大きな影響を与えており、その社会活動の評価をの資料として必要な場合、そして、社会一般の政党な関心の対象となる公的立場の人物であって、その者が適任者か否か等の判断の資料とする場合には、前科等に関する事実を公表することも許されるといっています。

 

判例チェック
□前科及び犯罪経歴は人の名誉、信用に直接関わる事項であり、前科等のある者も、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する(最判昭56・4・14)。
□ある者の前科等にかかる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的または社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動およびその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等に関わる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる(ノンフィクション「逆転」実名公表事件/最判平6・2・8)。

 

(3)容貌・姿態(肖像権)

 何人にも、承諾なしに、みだりに容貌・姿態を撮影されない自由があります。そのため、判例は、警察官が正当な理由もなく個人の容貌等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないといっています。ただし、現行犯であって、緊急の必要性があり、撮影の方法が相当な場合には、近くにいた第三者の容貌を含むことになっても、例外的に許されるというのが、判例です。
 また、自動速度監視装置(オービス)によって、速度違反車両の運転手の要望を写真撮影することについて、判例は、現に犯罪が行われている場合であり、その犯罪の性質・態様から緊急に証拠を保全する必要があり、しかも、その方法は一般的に許容される限度を超えない相当なものだから、仮に同乗者の容貌を撮影することになっても、憲法に違反しないといっています。

 

判例チェック
□個人の私生活上の自由の1つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有する。警察官が、正当な理由もないのに、個人の容貌等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない。現に犯罪が行われ、もしくは行われた後 間がないと認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性及び緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法で行われるときには、本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容貌等の撮影が許容される。そして、この場合には、近くにいたため除外できなかった第三者の容貌等を含むことになっても、憲法13条、35条に違反しない(京都府学連違法デモ撮影事件/最大判昭44・12・24)。

 

(4)指紋

 判例は、憲法13条により、みだりに指紋の押捺を強制されない自由が保障されているといっています。そして、判例は、在留外国人にも、みだりに指紋の押捺を強制されない自由の保障が等しく及ぶといいます。しかし、外国人登録法のかつての指紋押捺制度は、在留外国人の公正な管理という正当な目的に基づき、一般に許容される限度を超えない相当な方法によるものだから、憲法1絵上に違反しないといっています。

(5)氏名・住所・電話番号

 氏名・住所・電話番号・学籍番号についても、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというのが、判例です。判例は、これらの個人情報を、本人の意思に基づかずに、みだりに開示することは許されないといっています。そして、本人の同意を得る手続きが容易であるのに、それを経ないで、無断で開示することは、プライバシー情報の適切な管理に対する合理的な期待を裏切り、プライバシーを侵害するから、不法行為を構成するといっています。

3自己決定権

 自己決定権というのは、一定の私的事項について、権力の干渉を受けることなく、自ら決定することのできる権利をいいます。自己決定権も、憲法13条によって保障される人権であると解されています。

 

1-4-2法の下の平等

1法の下の平等
(1)法の内容の平等

 憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等」と定めています。「法の下に平等」という原則は、立法者をも拘束し、法の内容自体が平等であることを求めているというのが多くの学者の考え方です。差別的な内容の法を、いかに平等に適用しても、不平等な結果しか得られないからです。

(2)形式的平等

 そして、多数説は、憲法14条1項が求めているのは、実質的平等ではなく、形式的平等であるといっています。結果を平等にする必要まではなく、一律同等に扱えばよいというのです。

(3)相対的平等

 また、憲法14条1項が要請する平等は、例外を許さない絶対的秒ではなく、合理的な差異を許容する相対的平等であると解されています。平等を機械的・絶対的に貫くと、かえって妥当でない結果を生じるからです。
 したがって、差別的な扱いがなされた場合、それが憲法14条1項に違反するか否かは、その扱いが合理的なものか否かによって決まります。

 

判例チェック
□普通地方公共団体が、職員に採用した在留外国人に対して、合理的な理由に基づき、日本国民と異なる処遇をしても、違憲違法ではない。普通地方公共団体が、公権力公使等公務員の職とこれに必要な職務体験を積むための職を包含する一体的な管理職任用制度を構築し、日本国民である職員に限り、管理職に昇任できるという措置をとることは、合理的な理由に基づくものであり、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反しない(最大判平17・1・26)。

 

2憲法14条1項後段の列挙

 憲法14条1項後段の列挙は、例示的列挙にすぎず、列挙以外の自由による差別も、原則として許されないというのが、判例です。
 憲法14条1項後段の「人種」とは、人間の人類学的種類であり、国籍は含まれません。そして、「社会的身分」とは、社会において継続的に占める地位を意味し、高齢であることは、これに当たらないというのが、判例です。また、「門地」とは、家柄のことです。

3貴族制度・栄典授与

 憲法14条2項は1項を受けて、貴族の制度を禁止しています。また、憲法14条3項は、栄典の授与にはいかなる特権も伴わないと定めています。

 

1-4-3参政権

1選挙権

 参政権というのは、国民が主権者として政治に参加する権利のことです。憲法15条1項は、国民に選挙権を保障し、公務員の選定・罷免が究極的に国民の意思に基づくことを求めています。そして、憲法15条1項は、立候補の自由の保障も含むというのが、判例です。立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあるからです。
 選挙権は、国民に国政への参加の機会を保障する基本的権利であり、議会制民主主義の根幹を成す権利です。そのため、選挙権の行使を制限できるのは、その制限なしでは、選挙の公正を確保することが事実上不能または著しく困難な場合に限られると考えられています。

 

判例チェック
□憲法は、国民に対して投票する機会を平等に保障している。国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、制限するためには、やむを得ないと認められる事由がなければならない。そして、やむを得ない事由は、その制限なしでは、選挙の公正を確保することが事実上不可能あるいは著しく困難であると認められる場合でない限り認められない(最大判平17・9・14)。

 

2選挙の基本原則
(1)普通選挙

 憲法15条3項は、成年者による普通選挙を保障しています。普通選挙というのは、財力等を選挙資格の要件としてない選挙制度のことです。要するに、選挙資格の平等を求める選挙制度のことです。
 ★財力等を選挙資格の要件とする選挙制度を制限選挙といいます。

(2)平等選挙

 憲法14条1項・44条ただし書き¥は、平等選挙を求めています。平等選挙というのは、複数投票制などの不平等選挙を否定し、投票を1人1票とするとともに、1票の重みの平等をも要請する制度です。単に平等に選挙権を与えればよいのではなく、与えた選挙権の内容(投票の価値)も平等であることを求めるものです。普通選挙が、資格の平等を求めるのに対して、平等選挙は、数・価値の平等を求めるのです。

 

判例チェック
□憲法14条1項に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、徹底した平等化を志向するものであり、選挙人資格における差別の禁止にとどまらず、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである(最大判昭51・4・14)。
□憲法は、投票価値の平等を選挙制度の仕組みを決定する唯一・絶対の基準としているわけではなく、投票価値の平等は、国会が正当に考慮できる他の政策的目的或いは理由との関連において調和的に実現されるべきものである(最大判平18・10・4)
□参議院の選挙区選出議員は、都道府県が政治的に1つのまとまりを有する単位と捉えうることに照らし、これを構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとしたものである。参議院議員の選挙制度の仕組みは、国民各自、各層の利害や意見を公正かつ効果的に国会に代表させるための方法として合理性を欠くものとはいえず、国会に委ねられた立法裁量権の合理的公使として是認しうる。このうな制度の下では、投票価値の平等の要求は、人口比例主義を最も重要かつ基本的な基準とする選挙制度の場合と比較して、一定の譲歩を免れない(最大判平12・9・6)

 

(3)秘密選挙

 憲法15条4項前段は、秘密選挙を保障しています。秘密選挙というのは、公権力に対してはもちろん、私人間でも、誰に投票したかを知られないことをいいます。判例は、議員の当選の効力を定める手続きにおいても、誰に投票したかを取り調べてはならないといっています。

3議員定数の不均衡

 議員定数の配分については、国会の裁量に委ねざるを得ません。しかし、国会において通常考慮できる諸般の要素を斟酌しても、その投票価値の不平等に合理性があるとは考えられない場合には、憲法に違反すると、判例はいっています。ただし、定数格差が選挙権の平等の要請に反すれば、直ちに違法違反というわけではありません。判例は、合理的期間内に是正されない場合に初めて違憲になるといっています。
 また、憲法に違反した定数の配分規定の下で行われた選挙が無効となるわけではありません。選挙を無効とすると、議院の活動に支障をきたし、配分規定の是正もできないという不当な結果を招く可能性があります。そのため、判例はl、行政事件訴訟法31条の事情判決の規定に含まれる基本原則を援用し、その選挙を違法と宣言するが、無効とはしないといっています。

 

判例チェック
□議員は、いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり、地域性に係る問題の為に、ことさらにある地域の選挙人と他の地域の選挙人との間に投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとは言いがたい。1人別枠方式が選挙区間の投票価値の軟差を生じさせる主要な要因になっていたことは明らかであり、1人別枠方式は、憲法の投票価値の平等の要求に反する(最大判平23・3・23)

 

1-4-4受益権

1受益権とは何か

 受益権というのは、人権を確保するために、国家に対して作為を求める権利です。国務請求権ともいいます。裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権及び請願権がこれにあたります。

2裁判を受ける権利

 憲法32条は、裁判を受ける権利を保障しています。裁判には、民事事件や刑事事件の裁判だけでなく、行政事件の裁判も含まれます。

3国家賠償請求権

 憲法17条は、公務員の不法行為による損害について、国又は公共団体の賠償責任を認め、被害者の救済を確実なものにしようとしています。ただし、憲法17条を直接の根拠として、国家賠償を求めることはできません。国家賠償請求権の行使には、法律の制定が必要であり、国家賠償法の制定によって初めて国家賠償請求権が現実のものになったのです。

 

判例チェック
□国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係で法的責任を負うものではない。国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも関わらず、国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けない(在宅投票制度廃止事件/最判昭60・11・21)。

 

4刑事補償請求権

 刑事補償請求権というのは、本来必要でないのに、抑留・拘禁という人権制約を受けた者に対して、相応の補償を行い、公平を図ろうとするものです。憲法40条は、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けた場合に補償請求を認めています。

5請願権

 憲法16条は、請願権を保障しています。請願というのは、国務に関して希望を述べることです。請願の対象は、広範囲に及び、憲法改正の請願を行うこともできます。ただし、請願を受けた機関は、それを誠実に処理すればよく、その内容を審理判定する義務を負うわけではありません。

 

 

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