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内閣と財政

Section8 内閣と財政

<ポイント>

1 内閣

・内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
・予算の作成は、内閣の専権である。予算に予備費を設け、内閣の責任で支出できる。
・条約の締結権は、内閣にある。
・内閣は、法律の規定を実施するために、政令を制定することができる。
・衆議院が内閣不信任決議を行うと、衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職をしなければならない。

2 内閣総理大臣と国務大臣

・内閣は、首長たる内閣総理大臣と、その他の国務大臣で組織する。
・内閣総理大臣は、国会議員でなければならず、国務大臣もその過半数は、国会議員でなければならない。
・国務大臣の任免は、内閣総理大臣の専権である。
・内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出する。
・国務大臣は、在任中、内閣総理大臣の同意がないと、訴追されない。

3 財政民主主義

・国費の支出は、予算に計上し、国会の議決を経たものに限定される。
・租税の新設や税制の内容の変更は法律に基づいて行わなければならない。
・課税権にも度月、経費に充てる目的で、一定の要件に該当するすべての者に課す金銭給付は、形式のいかんにかかわらず、租税である。

 

1-8-1 内閣

1 行政権
(1)行政権の帰属

 憲法65条は、「行政権は、内閣に属する」と定めています。内閣が、行政作用を処理する中枢の機関であり、最高の統括機関であるというのです。内閣というのは、首長たる内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織される合議制の機関です。

(2)独立行政委員会

 特定の行政分野について、内閣から独立して職権を行使することが認められている合議制の機関を独立行政委員会という。人事院や公正取引委員会が代表例です。
 独立行政委員会が内閣から独立して行政を行うことは憲法65条に違反しないと考えられています。

2 内閣の責任
(1)内閣の連帯責任

 内閣は、行政権の公使について、国会に対し連帯して責任を負います(66条)。国民の代表機関である国会を通じて、行政権の行使をコントロールしようというわけです。
 国会は、内閣の連帯責任だけでなく、各大臣の単独責任を追及することもできます。個々の国務大臣の所管事項だけが問題になることもあるのです。

(2)議院内閣制

 立法府と行政権が一応分離し、行政府が立法府に対して連帯責任を負う制度を議院内閣制といいます。日本国憲法は、議院内閣制を採用しています。

3 内閣の権能
(1)国事行為に対する助言と証人

 内閣は、天皇の国事行為に対して、助言と承認を行います(3条)。助言と承認は、別個の行為ではなく、一個の行為であって、国事行為の前後いずれかに一回行われれば良いと考えられています。

(2)国会の召集の決定

 内閣は、国会の召集を決定します。常会・臨時会・特別会のいずれについても、内閣に召集決定権があります。また、参議院の緊急集会を求めることができるのも、内閣です。

(3)裁判官の指名・任命

 内閣には、最高裁判所の長たる裁判官の指名権があります(6条)。そして、他の裁判官については、内閣の任命権があります(79,80条)。ただし、下級裁判所の裁判官の任命は、最高裁が指名した者の名簿から行わなければなりません。司法権の独立を確保するためです。

(4)法律の執行と国務の総理

 憲法73条は、法律を誠実に執行し、国務を総理することを内閣の事務としています。内閣には、法律を誠実に執行する義務があり、内閣は、憲法に違反する疑いがある法律だと思っても、誠実に執行しなければならないのです。

(5)外交関係の処理と条約の締結

 外交関係を処理し、条約を締結することも、内閣の重要な権限です(73条)。条約を締結するための相手国との交渉には、専門知識とそれに基づく柔軟且つ迅速な対応が求められますこの要請に応じられるのは内閣であるため、内閣に条約の締結権があるのです。

(6)官吏に関する事務の掌理

 官吏に関する事務を掌理することも、内閣の権限です(73条)。官吏は、国家公務員のみを指し、地方公務員は含みません。

(7)予算

 予算を作成し、国会に提出することは、内閣の専権とされており、他の機関が行うことはできません(73,86条)予算の作成には、専門知識が必要だからです。
 予算には、不足の出費に対応するために、予備費を設け、内閣の責任で支出することができます(87条)。事後に国会の承諾を得なければなりませんが、承諾を得られなくても、内閣に政治的責任が発生するだけです。支出が無効となるわけではありません。

(8)政令の制定

 法律の規定を実施するために、内閣は、政令を制定することができます(73条)。政令で、法律を実施するための細則(実施命令)や法律によって個別具体的に委任された事項(委任命令)を定めることができるのです。
 また、特に法律の委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできます。

(9)恩赦の決定

 大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権という恩赦の決定権も、内閣にあります(73条)。内閣が恩赦を決定すると、天皇が、内閣の助言と承認に基づき、国事行為としてそれを認証します(7条)。

4 内閣不信任
(1)内閣不信任決議

 衆議院が不信任決議案を可決または信任決議案を否決し、内閣を信任しないという意思を明確に表示した場合、内閣は、解散総選挙か総辞職かの二者択一に追い込まれます。10日以内に衆議院の解散という対抗手段に出るか、総辞職するかのいずれかを選択しなければならないのです(69条)。

(2)衆議院の解散

 衆議院の解散は、天皇の国事行為とされています(7条)。しかし、天皇には国政に関する権能がないため、衆議院の解散権の実質的主体は、内閣であると解されています。

(3)衆議院議員総選挙

 衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙が行われます。そして、総選挙の日から30日以内に国会(特別会)が召集されます(54条)。

5 内閣の総辞職

 総辞職というのは、内閣を構成する全ての大臣が辞職することです。辞職ですから、内閣が自由に決定できるはずです。しかし、次の場合には、内閣は、総辞職しなければなりません。
 @衆議院の内閣不信任決議案可決又は信任決議案秘訣に対抗して衆議院を解散しないとき(69条)
 A内閣総理大臣が欠けたとき(70条)
 B衆議院議員総選挙の後に初めて国会が召集されたとき(70条)
 ただし、総辞職したからといって、直ちに仕事を放り出すことは許されません。新しい内閣総理大臣が任命されるまで、内閣は、引き続きその職務を行います(71条)。

 

1-8-2 内閣総理大臣と国務大臣

1 内閣の組織

 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織します(66条)。内閣総理大臣と国務大臣は、行政機関の長として行政事務を分担管理するのが通常ですが、行政事務を分担管理しない無任所の大臣を置くこともできます。

2 内閣総理大臣
(1)内閣総理大臣の地位

 内閣総理大臣は、首長です。内閣総理大臣には、首長たる地位が認められています(66条)。内閣の連帯責任の原則を貫きつつ、積極行政を推進するためには、内閣の一体性を確保する必要があります。そのために、内閣総理大臣を首長としたのです。

(2)内閣総理大臣の指名・任命

 内閣総理大臣は、国会の指名に基づいて、天皇が任命します(6条)。内閣総理大臣は、文民でなければなりません(66条)。また、内閣総理大臣は、国会議員でなければなりません。衆議院議員でも、参議院議員でも構いませんが、国会議員でなければならないのです。

(3)内閣総理大臣の権能

 内閣の首長たる内閣総理大臣には、国務大臣の任免権が認められています。国務大臣の任免は、内閣総理大臣の専権であり、閣議にかける必要はありません。内閣総理大臣は、自らの判断で国務大臣を任命したり、罷免したりすることができるのです(68条)。
 また、内閣の首長たる内閣総理大臣には、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務や外交関係について国会に報告する権限があります。そして、行政各部を指導監督する権限もあります(72条)。
 さらに、内閣総理大臣には、議案について発言するために衆参両議院に出席する権限(63条)や、法律や政令に連署したりする権限(74条)もあります。

3 国務大臣
(1)国務大臣の資格要件

 国務大臣も、文民でなければなりません(66条)。そして、国務大臣の過半数は、国会議員でなければなりません(68条)。衆議院議員でも、参議院議員でも構いませんが、過半数は、国会議員でなければならないのです。

(2)国務大臣の特権

 国務大臣には、在任中は、内閣総理大臣の同意がないと、訴追されないという特権が与えられています。ただし、訴追できなくなるわけではありません。内閣総理大臣の得られず、在任中は訴追できなくても、退任すれば、訴追できるのです。

 

1-8-3 財政

1 財政民主主義

 憲法83条は、財政民主主義の原則を明示しています。財政民主主義というのは、国の財政作用の一切が国会の議決に基づくことを求める原則です。財政国会中心主義ともいいます。
 また、憲法85条は、国費の支出について、国会の議決を要求しています。支出面でも、財政民主主義を貫くわけです。

2 租税法律主義

 憲法84条は、憲法83条の財政民主主義の原則を受け、租税法律主義を定めています。租税法律主義というのは、租税の新設や税制の内容の変更は法律に基づいて行わなければならないことをいいます。
 租税というのは、課税権に基づき、公の経費に当てる目的で強制的に賦課徴収される財貨をいいます。国民健康保険の保険料のように、特別の給付に対する半耐久として徴収される金銭は、租税ではありません。ただし、租税以外の公課であっても、租税に類似する性質のものには、憲法84条の趣旨が及ぶと、判例はいっています。
 憲法84条は、租税の賦課徴収の具体的内容を全て法律で明確に定めることを求めています。そのため、課税物件や税率についても、法律で明確に定める必要があります。

 

判例チェック
□国又は地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付として課すのではなく、課税権に基づき、経費に充てる資金を調達する目的で、一定の要件に該当する全ての者に課す金銭給付は、その形式いかんにかかわらず、憲法84条の租税に当てる。租税以外の公課であっても、賦課徴収における強制の度合い等の点で租税に類似する性質を有するものには、憲法84条の趣旨が及ぶと解するべきである。ただし、租税以外の公課は、多種多様であるから、規律のあり方については、その公課の性質・課税徴収の目的・強制の度合い等を統合考慮して判断すべきである(最大判平18・3・1)。
□国民健康保険の保険料は、保険給付を受けることの反対給付として徴収されるものであるから、租税ではなく、憲法84条が直接適用されることはない。しかし、国民健康保険の保険料は、賦課徴収の強制の度合いにおいて租税に類似する性質を有するから、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである。ただし、保険料の賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは、賦課徴収の強制の度合いに加え、社会保険としての国民健康保険の目的・特質等も総合考慮して判断する必要がある(最大判平18・3・1)。

 

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