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経済的自由・人身の自由と社会権

Section6 経済的自由・人身の自由と社会権

<ポイント>

1 経済的自由

・憲法22条1項は、広く営業の自由(職業活動の自由)を保障している。
・小売市場の許可制は、著しく不合理なことが明白とはいえないから、合憲である。
・薬局の適正配置規制は、必要性と合理性を認められないから、違憲である。
・私有財産を公共の為に用いることができるが、損失を補償しなければならない。

2 人身の自由

・奴隷的拘束は、例外なく禁止されている。
・刑事手続や刑事実体面は、法律で適正に定めなければならない。
・行政手続きにも、告知・聴聞の権利を与える必要のある場合がある。

3 社会権

・憲法25条1項は、直接国民に具体的権利を付与したものではない。
・生存権を具体化する立法について、判例は、立法府に広い裁量を認めている。
・生存権の具体化立法について司法審査が及ぶのは、著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合だけである。
・国にも、教育内容を決定する権利があるが、国の介入によって、子供の自由かつ独立の人格としての成長が妨げられることは許されない。
・教科書検定は、教育を受ける権利を害するものではない。
・憲法28条は、団結権・団体交渉権・団体行動権という労働基本権を保障している。

 

1-6-1経済的自由

1職業の自由
(1)職業選択の自由と営業の自由

 憲法22条1項は、職業選択の自由だけでなく、広く営業の自由(職業活動の自由)を保障しているというのが、判例です。職業選択の自由には、職業の選択だけでなく、選択した職業を遂行する自由も含まれるというのです。

(2)経済活動に対する規制

 個人の経済活動に対しては、その活動がもたらす弊害を除去・緩和する規制だけでなく、社会経済全体の調和的発展を図るための規制も許されると、判例はいっています。経済活動の自由は、他者の利益を守るための内在的制約(消極規制)だけでなく、社会経済政策を実現するための政策的制約(積極的規制)にも服するというのです。

 

判例チェック
□個人の自由な経済的活動からもたらされる弊害を消極的に除去・緩和するために必要かつ合理的な規制が許されることはいうまでもない。のみならず、個人の経済的活動に関しては、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、積極的な社会経済政策の実施として必要かつ合理的な規制措置を講ずることも許される(小売市場許可制事件/最大判昭47・11・22)。

 

(3)経済活動の規制の合憲性判断

 判例は、内在的制約(消極規制)と政策的制約(積極規制とで、合憲性の判断基準を使い分けています。内在的制約(消極規制)には、厳格な合理性の基準を用い、政策的制約(積極規制)には、明白性の原則を用いるのです。
 厳格な合理性の基準というのは、規制が許されるためには、規制の必要性・合理性が認められ、かつ、その規制より緩やかな規制では目的を十分達成できないことを要するというものです。これに対して、明白性の原則というのは、立法府がその裁量権を逸脱し、当該規制が著しく不合理であることが明白な場合にのみ規制を違憲とするものです。

 

判例チェック
□自由な職業活動が社会にもたらす弊害を防止するための消極的・警察的規制は、必要性・合理性が認められると共に、それよりも緩やかな規制では目的を十分に達成できないと認められることを要する(薬事法距離制限事件/最大判昭50・4・30)。
□政策的規制は、立法府の政策技術的な裁量に委ねるほかなく、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、その規制が著しく不合理であることが明白な場合にのみ、それを違憲として効力を否定することができる(小売市場許可制事件/最大判昭47・11・22)。

 

(4)小売市場の許可制

 小売商業調整特別措置法は、特定の都市でのマーケットの開設を許可制としています。この小売市場の許可制について、判例は、社会経済を調和的に発展させるための中小企業保護政策の1つとして採った積極規制であり、それが著しく不合理であることが明白とはいえないとして、合憲といっています。

(5)薬局の適正配置規制

 薬事法が薬局の設置場所に距離制限を設け、薬局の配置を規制していたことについて、判例は、主として国民の生命及び健康に対する危険を防止するための消極的・警察的規制であり、その必要性と合理性を認めることができるないから、違憲であるといっています。

(6)公衆浴場の配置規制

 公衆浴場法による公衆浴場の配置規制については、健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉を維持するという積極目的によるものとする判例と、国民お保健福祉の確保と自家風呂を持たない国民の必要不可欠な厚生施設の確保という積極・消極目的の併有とする判例とがあります。しかし、いずれの判例も、合憲であるといっています。

(7)酒類販売業の免許制

 酒税法が酒類の販売業について免許制を採用しているのは、酒税の確実な徴収と税負担の消費者への円滑な転嫁を確保する必要からであり、立法府の裁量を逸脱するものではなく、憲法22条1項に違反しないというのが、判例です。

(8)登記申請手続の代理人の限定

 司法書士法が登記申請手続の代理を司法書士に限定することについて、判例は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を与えることに鑑みれば、公共の福祉に合致した合理的なもので、憲法22条1項に反しないといっています。

2居住・移転の自由
(1)居住・移転の自由とは何か

 憲法22条1項は、職業選択の自由のほかに、居住・移転の自由も保障しています。居住・移転の自由というのは、居所をどこに定めるかを自由に決定できる事にして、広く人の移動の自由を保障しようというものです。居住・移転の自由も、経済的自由の1つとされています。人が自由に動くことができ、労働力が商品化することが、資本主義の大前提だからです。

(2)海外渡航の自由

 憲法22条2項は、外国に移住する自由・国籍離脱の自由を保障しています。外国に移住する自由には、外国への一時旅行する自由も含まれるというのが、判例です。判例は、憲法22条1項は、国内の自由を2項は、海外に関連する自由を定めたものと扱っているのです。

3財産権
(1)個人の財産権・私有財産制

 憲法29条1項は、個人が持っている具体的な財産上の権利を人権として保障すると共に、私有財産制を制度として保障しています。

(2)財産権の規制

 財産権は、経済活動の自由と同様に他者の利益を守るという消極目的のための内在的制約だけでなく、社会経済政策を実施するという積極目的のための政策的制約にも服します。防火上危険のある建築物の使用禁止は、内在的制約の例です。これに対して、独占禁止法による私的独占の排除は、政策的制約の例です。

 

判例チェック
□財産権に加えられる規制が是認されるものかどうかは、規制の目的・必要性・内容・その規制によって制限される財産権の種類・性質及び制限の程度等を比較考慮して決すべきである(森林法共有林事件/最大判昭62・4・22)。

 

(3)損失補償

 公共の為に、特定人の財産を強制的に取得したり、利用方法について制限を加えたりすることができます。ただし、その結果、特定人が損失を被った場合には、正当な補償をしなければなりません。

 

判例チェック
□憲法29条3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき、合理的に算出された相当な額をいう(最判平14・6・11)。

 

1-6-2人身の自由

1奴隷的拘束・苦役からの自由

 憲法18条前段は、奴隷的拘束を禁じています。奴隷的拘束は、人間の尊厳に反するものですから、絶対的に禁止されています。例外は一切なく、公共の福祉による例外も許されません。
 また、憲法18条後段は、意に反する苦役を禁じています。ただし、これには例外があり、犯罪による処罰の場合には、苦役も許されます。

2法定手続の補償
(1)適正な手続の法定

 憲法31条は、刑罰を科すには、法律の定めた手続によらなければならないことを定めています。これは、合衆国憲法のデュー・プロセス条項の流れをくむものです。そのため、刑事手続の法定だけでなく、法律の定めた手続が適正なものであることをも求めています。
 さらに、憲法31条は、犯罪や刑罰の要件という刑事実体面の法定・適正をも要求する趣旨です。そのため、刑法の大原則である罪刑法定主義(法律なく刑罰なく、法律なくば犯罪なしという原則)の根拠になると解されています。

(2)告知・聴聞の権利

 憲法31条の要請する適正手続の実質的な内容は、告知と聴聞の権利であると解されています。告知と聴聞の権利というのは、公権力が公民に対して不利益を課す場合には、予めその内容を当事者に告知して、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならないことを言います。

 

判例チェック
□第三者の所有物をその所有者に告知・聴聞の権利を行使する機会を与えないで没収することは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところである(第三者所有物没収事件/最大判昭37・11・28)。

 

(3)行政手続の適正

 憲法31条は、直接には刑事手続に関するものです。しかし、判例は、行政手続も、刑事手続ではないという理由だけで、憲法31条の保障の枠外にあるというわけではないといっています。ただし、行政処分の相手方に告知と聴聞の権利を与えるか否かは、制限を受ける権利利益の内容・性質・制限により達成しようとする公益の内容、緊急性等を総合衡量して決すべきであるというのが、判例です。

 

判例チェック
□憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続も、それが刑事手続ではないという理由のみで、その全てが当然に同条の保障の枠外にあると判断するのは相当ではない。しかし、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、行政手続は刑事手続とは性質が異なり、また、多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容・性質・行政処分によって達成しようとする公益の内容、緊急性等を総合衡量して決すべきである(成田新法事件/最大判平4・7・1)。

 

1-6-3社会権

1社会権とは何か

 社会権というのは、国家に対して積極的な配慮を要求する権利です。資本主義によって生じた社会経済的弱者が国家に対して人間に値する生活を営むことを要求する現代的な人権が社会権です。国家による自由とも呼ばれています。社会権とされるのは、生存権・教育を受ける権利・勤労権及び労働基本権です。

2生存権
(1)生存権とは何か

 憲法25条1項は、いわゆる生存権を定め、憲法が社会国家あるいは福祉国家の理念に立つことを明らかにしています。
 生存権というのは、人間に値する生活を営む権利です。憲法25条1項の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」のことです。

(2)生存権は具体的権利か

 憲法25条1項は、国の責務を宣言したにとどまり、直接国民に具体的権利を付与したものではないというのが判例です。ですから、憲法25条1項を直接の根拠として、生活扶助を求めることはできません。生活扶助を請求するには、憲法25条1項を具体化した法律が必要です。

(3)生存権の具体化立法

 憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」は、極めて抽象的・相対的な概念です。同条を具体化するには、複雑多様で、高度な専門技術的な考察に基づいた政策的判断が必要です。そのため、憲法25条の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられていると、判例はいっています。そして、判例は、立法措置が著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合にのみ、裁判所は審査できるといっています。

 

判例チェック
□「健康で文化的な最低限度の生活」は、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況との相関関係において判断決定されるべきものである。憲法25条を具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度な専門技術的な考察とそれに基づいて政策的判断を必要とする。したがって、憲法25条の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄である(堀木訴訟/最大判昭57・7・7)。

 

3教育を受ける権利
(1)権利を受ける権利と受けさせる義務

 憲法26条1項は、教育を受ける権利を保障しています。学校教育だけでなく、社会教育を受ける権利も保障しています。この規定は、国民が人間として成長し人格を完成させるための学習をする権利、子供が大人に対して教育を施すように要求する権利があるという考えに基づくものであるというのが、判例です。
 これを受けて、憲法26条2項は、義務教育について定めています。全ての国民に対して、保護する子女に普通教育を受けさせる義務を課すと共に、国に対して、義務教育を無償とするように求めています。ただし、無償とすることが要請されるのは、授業料であるというのが、判例です。

(2)教育権

 子供の教育は、子供の学習をする権利に対応し、その充足を図り得る立場にある者の責務です。そのため、判例は、国にも、必要かつ相当と認められる範囲で、教育内容を決定する権能があるといっています。ただし、子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入は許されないというのが判例です。

 

判例チェック
□国も、子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子供の成長に対する社会公共の利益と関心に応えるため、必要かつ相当に認められる範囲において、教育内容を決定する権能を有する(旭川学力テスト事件/最大判昭51・5・21)。

 

(3)教科書検定

 教育を受ける権利を害するか否か問題となったのが、教科書検定です。判例は、教育を受ける権利を害するものではないと結論づけています。教科書検定は、教育内容を正確かつ中立公正で全国的に一定の水準にするという要請を実現するためのものであって、その審査は必要かつ合理的な範囲のものであるから、子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるものではなく、また、教師の授業における裁量を奪うものでないというのが、その理由です。ただし、判例は、審査が与えられた裁量権の範囲を逸脱すれば、当然違法であるといっています。

4労働基本権
(1)労働基本権とは何か

 憲法28条は、労働基本権を保障しています。労働基本権というのは、団結権・団体交渉権・団体行動権のことです。労働基本権を保障するのは、使用者に対して劣位にある労働者の自由と平等を実質的に確保するためです。労使間において労働者を保護することが目的ですから、憲法28条は、私人間にも直接適用されます。

(2)団結権

 団結権というのは、労働者が団体を組織する権利です。つまり、労働組合結成権のことです。労働組合には、一定の範囲で、組合の統制を乱した組合員に対して制裁を行う権利が認められています。これを統制権といいます。

(3)団体交渉権・団体行動権

 団体交渉権・・・労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利です。
 団体行動権・・・労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利のことです。
 判例は、政治目的を達成するためのストライキ(政治スト)には、憲法28条の保障は及ばないといっています。

 

判例チェック
□使用者に対する経済的地位の向上と直接関係があるとはいえない政治的目的の為に争議行為を行うことは、私企業の労働者であると公務員であるとを問わず、憲法28条の保障を受けない(全農林警職法事件/最大判昭48・4・25)。

 

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