今年は本気に行政書士!

国会

Section7 国会

<ポイント>

1 国会の地位・権能

・国会は、国の唯一の立法機関である。
・議員は、選挙区の有権者から指図を受けたりすることなく、自由に行動できる。
・衆議院で可決した法律案を参議院が否決しても、衆議院が出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば、法律として成立する。
・予算について両議院で異なった議決をし、両議院の協議会を開いても意見が一致しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。
・両議院の会期は同一である。会期の議決について衆議院の優越が認められている。
・衆議院の解散後に緊急の必要が生じた場合、内閣は参議院の緊急集会を求めることができる。ただし、そこでの措置は、臨時のものである。

2 議員の権能

・議員には、規則制定権があり、議員の議決だけで規則を制定できる。
・議員は、懲罰権があり、出席議員の3分の2以上の賛成により、院内の秩序を乱した所属議員を除名できる。
。議員には、議員の資格に関する争訟を裁判する権限もある。
・両議院には、国政調査権があり、証人の出頭を求めることもできる。
・思想・良心の自由やプライバシーの権利を侵害するような国政調査は許されない。

3 議員の特権

・国会議員は、法律の定める場合を除いて、国会の会期中逮捕されない。
・国会議員は、議員で行った演説・討論・表決について、院外で法的責任を問われない。

 

1-7-1 国会の地位・権能

1 国会の地位
(1)国権の最高機関

 憲法41条前段は、国会を国権の最高機関としています。しかし、これは、国政における国会の重要性を政治的に強調したものに過ぎないというのが、多くの学者の考え方(政治的美称説)です。この規定に法的意味を認め、国会を国権の統括機関とすると、統治の基本原理である権力分立原則に抵触するからです。

(2)国の唯一の立法機関

 憲法41条後段は、国会を国の唯一の立法機関としています。立法を行う国家機関は、原則として国会だけであり(国会中心立法の原則)、立法行為に国会以外の機関が関与してはならないのが原則であるというのです(国会単独立法の原則)。

(3)国民の代表機関

 憲法前文第1段は、代表民主制を原則とするといっています。そして、憲法43条1項は、国会議員を全国民の代表であるといっています。
 このように国会議員は、全国民の代表であって、一部の階層や地域の代表ではありません。そのため、議員は、選挙区の有権者から指図を訓令をうけたり、それに法的に拘束されたりすることなく、議会において自由かつ独立に行動できるのが原則です(自由委任の原則)。ただし、政党員たる議員は、党議に従って発言し表決しなければなりません(党議拘束)。現代国家は、政党制を基礎とする民主国家であり、国民は政党の公約に対して投票をしますから、議員は党の決定に従って行動してこそ国民の真の代表者たり得ると考えられているのです。

2 国会の権能
(1)法律の制定

 国会は、立法機関ですから、国会には、法律を制定する権能があります。法律は、原則として両議院で可決したときに成立します。
 衆議院が可決した法律案を参議院が否決するなど異なった議決をした場合、衆議院は、意思の統一を目指して両議院の協議会の開催を求めることもできます。しかし、この開催は義務的なものでなく、衆議院には、再可決という手段もあります。衆議院が出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば、衆議院の意思どおりに法律として成立するのです。
 なお、参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に議決しない場合、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができます。

(2)予算の議決

 予算の作成には、専門的知識が必要です。そのため、予算の作成は、内閣の専権とされています。しかし、予算は、国会の審議を受け、議決を経なければなりません(86条)。予算は、政策の指針となり、国政の方向を決定づけるものだからです。
 予算についても、衆議院の優越が認められており、衆議院に先議権があります。そして、衆参両議院が異なった議決をした場合には、両議院の協議会を開催しなければなりません。両議院の協議会を開いても、意見が一致しない場合には、衆議院の議決が国会の議決になります。また、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、参議院が議決しない場合も、衆議院の議決が、国会の議決になります(60条)。

(3)条約の承認

 条約の締結には、専門的知識に基づく柔軟かつ迅速な対応が必要ですから、その締結権は、内閣にあります。条約は、国家の運命や国民の権利義務に直接関係するため、国会に承認権が認められています(73条)。
 条約の承認手続きは、予算の議決と同じです。ただし、衆議院の先議権は認められていません(61条)。

(4)内閣総理大臣の指名

 国会には、内閣総理大臣を指名する権能もあります。内閣総理大臣を早期に選出するため、内閣総理大臣についても、衆議院の優越が認められています。衆参両議院が異なった議決をした場合、両議院の協議会を開いても意見が一致しなければ、衆議院の議決が国会の議決になります。また、衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が指名の議決をしない場合には、直ちに、衆議院の議決が国会の議決になります。

(5)弾劾裁判所の設置と憲法改正の発議

 弾劾裁判所の設置(64条)と憲法改正の発議(96条)も、国会の権能です。これらに関しては、衆議院と参議院は対等で、衆議院の優越は認められていません。

3 国会の活動
(1)会期制

 国会は、一定の期間を限って活動能力を持つ会期制をとっています。国会の会期には、常会・臨時会・特別会という3種類のものがあります。
 常会は、一般に通常国会と呼ばれるもので、毎年1回召集されます。臨時会は、必要に応じて臨時に開かれる国会の会期です。特別会は、衆議院の解散・総選挙後に召集される国会の会期です。
 衆参両議院の会期は同じです。そのため、衆議院の解散により、参議院も閉会となります(54条)。また、会期の議決については、衆議院の優越が認められています。各会期は独立しています。そのため、憲法に規定はありませんが、会期中に議決されなかった案件が次の会期で継続審議されることは、原則としてないとされています。(会期不継続の原則)。また、否決された案件を同一会期中に再提出することは、原則としてできないとされています(壱児不再議の原則)。

(2)国会の召集

 国会の会期を開始させ、国会に活動能力を与える行為を召集といいます。国会の召集を決定するのは、内閣です。明文の規定があるのは臨時会(53条)だけですが、常会も特別会も、内閣に召集決定権があると解されています。そして、内閣の助言と承認の下で、天皇が国会を召集します(7条)。制定する法形式のことです衆参両議院は、本会議の手続や内部規律など議院として活動する上で必要な事項について、他の議院とは無関係に、独自の規則を定めることができるのです。

(3)参議院の緊急集会

 衆議院が解散されると、参議院も、同時に閉会になります。総選挙により衆議院の新しい構成が決定し、特別会が召集されるまでは、参議院も活動を停止するのが原則です。憲法54条は、衆議院の解散総選挙による空白を埋め、緊急事態に対処するために、参議院の緊急集会という制度を用意しています。
 参議院の緊急集会を求めることができるのは、内閣です。緊急集会の必要性の判断は、専ら内閣に委ねられており、参議院議員がこれを求めることはできません。
 参議院の緊急集会は、国会の権能を代行するものですから、法律・予算など国会の権能に属する議決を行うこができます。しかし、参議院の緊急集会での措置は、暫定的なものに過ぎません。特別会召集後10日以内に衆議院が同意しないと、緊急集会で取られた措置は、将来に向かって効力を失います。

(4)定足数と表決

 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができません。定足数は総議員の3分の1です。そして、議事は、原則として出席議員の過半数で決し、可否同数の時は、議長が決します(56条)。

(5)会議の公開

 衆参両議院の本会議は、原則として公開されます。ただし、出席議員の3分の2以上の多数で議決すれば、秘密会として後悔しないことができます。出席議員の3分の2以上が賛成さえすれば、会議の内容を問わず、秘密会を開催することができるのです(57条)。

 

1-7-2 議員の権能

1 議員の自律権
(1)議員の自律権とは何か

 衆参両議院には、それぞれ自立権が認められています。議員の自律権というのは、行政権・司法権、そして他の議員からの干渉を排除して、各議員が自主的に内部事項を決定することのできる権能です。役員選任権・議院規則制定権・懲罰権・議員の資格に関する裁判権が代表例です。

(2)役員選任権

 衆参両議院には、自律権の1つとして、役員選任権があります。衆参両議院は、それぞれ議長その他の役員を自主的に選任することができるのです(58条)。

(3)議院規則制定権

 次に、衆参両議院には、自律権として、議院規則制定権が認められています。議院規則というのは、各議員が単独で制定する法形式のことです。衆参両議院は、本会議の手続きや内部規律など議院として活動するうえで必要な事項について、他の議院とは無関係に、独自の規則を定めることができるのです(58条)。

(4)議員の懲罰権

 また、衆参両議院には、自律権として、議院の懲罰権もあります。衆参両議院は、院内の秩序を乱した議員を懲罰することができるのです。但し、懲罰として議員を除名(議員の資格を奪うこと)するためには、出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要とされています(58条)。

(5)議員の資格に関する裁判権

 さらに、衆参両議院には、自律権として、議員の資格に関する争訟を裁判する権限もあります。衆参両議院には、所属議員に被選挙権があるか否か、または、兼職が禁止されている公職についているか否かについての争いについて裁判をする権限もあるのです。ただし、議員の資格を失わせるには出席議員の3分の2以上の賛成による議決が必要です(55条)。議員の資格に関する議員の裁判に対して不服があっても、裁判所へ出訴することは許されないと解されています。

2 議員の国政調査権
(1)国政調査権とは何か

 国政調査権というのは、衆参両議院が国政に関する調査を行う権能です。憲法62条は、単に調査を行うだけでなく、証人の出頭・証言や記録の提出も要求できる強力な国政調査権を認めています。
 ★強力な権限といっても、逮捕や捜索押収までは認められていません。

(2)国政調査権の及ぶ範囲

 国政調査権は、憲法上議院に射止められた権能を補助するものであり、国政調査権が及ぶのは、議院の権能の範囲内であると考えられています(補助的権能説)。但し、議院の権能は、法律案や予算案の審議を中心に極めて広範囲にわたりますから、国政調査権は、実質上国政全般に及びます。

(3)国政調査権の限界

 例えば、思想・良心の自由やプライバシーの権利を侵害するような国政調査は許されません。また、判決批判を目的とする国政調査は、判決確定後であっても許されません。国政調査権といえども、司法権の独立を脅かすことは許されないのです。そして、起訴・不起訴について政治的圧力を加える目的での国政調査や捜査の続行に重大な支障を与えるような国政調査も許されません。検察権の適正な行使の支障となるような国政調査は許されないのです。

 

1-7-3 議院の特権

1 不逮捕特権

 憲法50条は、国会議員に国会会期中の不逮捕特権を認めています。国会の会期中は、国会議員は、原則として逮捕されません。院外での現行犯逮捕の場合と議員の許諾のある場合を除いて、国会議員は、会期中逮捕されないのです。また、会期前に逮捕されていても、所属議員の要求があれば、国会の会期中は釈放されます。政治的目的を帯びた不当な身体の拘束を防止し、議院の自由な行動を保護しようというのです。

2 免責特権
(1)免責特権とは何か

 憲法51条は、国会議員に免責特権を認めています。免責特権というのは、院内での議院の言論的活動に対しては、院外での法的責任を問わないというものです。一般国民であれば負う民事上・形而上の責任を否定し、院内での議院の職務活動の自由を保障しようというのです。ただし、政治責任を追及することはできます。所属政党がその議院を除名したいるすることはできるのです。

(2)免責される行為

 免責されるのは、議院における職務として、議員が行った行為です。会期外であっても、国会議事堂の外であっても、議員の職務として行われた行為は、面積の対象です。そして、議員の職務活動を全うさせるために、演説・討論・表決だけではなく、これらに付随して行われる行為も、免責されると解されています。ただし、野次や私語は含まれません。

 

判例チェック
□国会議員として職務を行うにつき、なされた事が明らかな発言について、その議員が個人的に政治責任を負うことはない。国会議員の国会における質疑において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、その国会議員が職務とは関わりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示するなど、国会議員が与えられた権限の趣旨に明らかに背いてその権限を行使したと認められるような特別の事情がない限り、国の賠償責任は生じない(最判平9・9・9)。

 

3 歳費受領権

 憲法49条は、衆参両議院の議員に、国庫から相当額の歳費を受ける権利を認めています。一般大衆にも国会議員への道を開くと共に、政治資金の提供者による不当な支配を防止するためです。ただし、裁判官の報酬と異なり、在任中減額されないことまでは保障されていません。

 

 

 

 

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